平成15年度 サイエンスパートナーシッププログラム事業(SPP)への参加




平成14年度のサイエンスパートナーシッププログラムへの参加報告はこちら



平成15年度も、数学分野から サイエンスパートナーシッププログラム (以下 SPP)事業へ参加しました。
今回は 県立福崎高校の理数コースの 1年生 30数名を 招いて、 計3回のプログラムを実施しました。 また、今回は 第1回から第3回までを通して、 「正12面体の対称性」という一貫した内容で 本学助手 加藤久恵とともに、 濱中が行いました。




「正12面体の対称性」



第1回:金平糖のような立体を作ろう

第2回:正12面体を動かそう

第3回:解けないパズル?



概して:


対称性というと、小学校では 線対称と点対称を学びますが、
では 点対称でも線対称でもない図形 には対称性が無いのか、というと
そうでもありません。

点対称でも線対称でもない図形

また、2つの図形を持ってきたとき どちらが対称性が高いか
考えるにはどうしたらいいでしょうか?

さて、 対称性のある図形とは
動かしても不変な図形と言えるでしょう。
(もっと 難しい言葉でいうと、群が作用する図形です)

また 対称性の大きさを考えるには その 図形を不変にするような
動かし方がどれだけあるのか (難しくいうと、作用する群)について
考える必要があります。

今回は あまり難しく考えずに、

1)紙工作で綺麗な立体を作る。
2)作った立体を 自分の手で動かすなかで 3次元空間や立体に慣れ
また 対称性について考える
3)理論的な面として 偶置換と奇置換について説明する。

という3つを柱に 実施致しました。









初日:金平糖のような立体を作ろう






初日は とにかく 紙工作をすることをメインにしました。
作ってもらったものは 上記の形です。
何にみえますか? 金平糖のようですか?

では上記の写真で、 緑の部分だけをみてください。
見えてきたでしょうか?緑の部分だけに注目すると
一つの正4面体ですね。

1度見えはじめると、とたんに 他の色も四面体であることが
見えてきます。

ピンク、オレンジ、緑、黄色、青。

これは 5つの四面体が複合した形です。
私は とても 美しい形だと思うのですがそう思いませんか?





小学生低学年の頃だったと思います。
はじめて 星形(五傍星)という 形を知ったとき、
とても綺麗な形だと心魅かれたことを覚えています。
でも、はじめは うまく一筆書きができなくて、
どうやって この図形を書いたらいいのだ? と考えたように思います。
そして 子供ながらに考えたのは こうでした。




「そうだ 真ん中に正5角形がある。
はじめに5角形を書いて 辺を延長すれば星形になるんだ。」

正多面体に対しても これと同じ発想で 種々の星形を作ることができます。
つまり、 正多面体の辺と面を延長するのです。
例えば、 正12面体の辺と面を少し延長すると 次のようになります。



正12面体の辺を延長する動画





さて 星形(五傍星)を描く方法は もう1つありますね。
つまり 通常の 一筆書きの あれです。ようするに
正5角形の頂点を 1つとばしに結んでいけばいいわけです。



これと同じ 発想正12面体に行ったらどうなるでしょう?

正12面体のすこし離れた 頂点を結んでいくのです。
これをうまくおこなうと、今回つくってもらった立体になるのです。



正12面体の頂点を繋いで正四面体の複合を作る動画




2日目:正12面体を動かそう。



正12面体の対称性が今回のテーマです。
図形の対称性とは何でしょう?


小学校では 点対称と線対称を習いますが、
そのどちらでもないけども 何か「対称性」の見える図形というのも
ありますね。



対称性とは 「その図形を不変にする動かし方がある」ということができます。

たとえば 正三角形でいうと
3つの対称軸に関する線対称以外にも、
「中心に関して120度回しても 不変」という対称性があります。

でも、 動かし方を いちいち 「中心に関して120度の回転」とかいうのは面倒で
動かし方 がたくさんあるときに 調べるのには とても不便です。

しかし 正三角形の 頂点に1、2、3と番号をつければ
3つの頂点の移り変わりで 動かし方を記述することができて 便利です。
実際、 正三角形を不変にする動かし方と、 3つの数字 1、2、3の並び替えとは
1対1に対応するのです。



さて 正12面体に話を戻しましょう。
正12面体には 20個も頂点がありますので、頂点の移り変わりで
記録していたら 大変です。 何かよい方法はないでしょうか?


そこで 今回の 金平糖のような形を使いましょう。
今回作ってもらった 立体は 正12面体の 頂点をつないだ形ですから
正12面体の代わりに この金平糖のような立体を形が変わらないように
動かしてみます。


動画

すると、形は 変わらないが、 色が変わりますね。
今回は 正12面体の頂点を繋いだこの金平糖のような立体を
いろいろ動かして 色の移り変わりを調べてもらいました。




すると 正12面体の対称性が浮かび上がってきます。
たとえば、正12面体は 位数2、3、5の回転対称性しかもたないのです。
例えば、さきほどの動画の動きは3回やると元に戻ります。
動画


3日目:解けないパズル?



2日目では 正12面体の対称性を5つの 色の移り変わりで調べてもらいました。
さて、 正12面体を不変にする動かし方は 全部で60通りです。
ところが 5つの色の 並び替えは全部で120通りあります。


120通りの並び替え方のうち、
正12面体の回転と対応が あるモノ無いモノがあって、
それぞれが 半分半分なのです。


これは どういうことでしょう?


さて、つぎの写真のような パズルを考えます。
1、2、3、4、5と5つの数字がありますが、
この5つの数字を適当に並び替えます。

並び替えた状態から始めて、 空きマスに 数字を移動させることを繰り返して、
もとの1、2、3、4、5と並んだ状態に 戻せるでしょうか?
ちょっとした パズルですね。




このパズルを 生徒たちに調べてもらうと、
正12面体の回転に現れる 並び替えだと 解けるのに
正12面体の回転に現れない 並び替えだと 解けません

どうしてそうなるのか、
偶置換と奇置換ということについて 簡単に講義致しました。

そして、置換の偶奇について、わかってもらった後、
最後に ちょっと トリックのある次のような パズルに挑戦して
もらいました。


次の図のように正方形の図柄が 9枚のパネルに分割されて並べられています。




さて、左下の1枚を外して 一番下中央と右下のパネルを 入れ替えた状態初期状態とします。
この初期状態から パネルを空きマスに移動させることを繰り返して 右の ゴールの状態にできるでしょうか?